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【1】月島くんは恋する乙女 ー 彼女以外からの告白は無論お断り①

Auteur: 岩瀬れん
last update Date de publication: 2025-07-03 14:59:15

某日。"すずちゃんが好きだなぁ"なんて誰にも聞こえない告白を、心の中で呟いていた放課後。

「月島くんのこと、」

帰ろうとして下駄箱を開けたら「体育館裏で待ってます」とラブレターが入っていた。それも差出人不明のラブレター。

その字が彼女が書いたものではないと分かってはいたが、ずっと待っていられるのも何だか嫌な話。

気が乗らないまま体育館裏に足を向けると、そこで待っていたのは確か同じクラスの女子生徒だった。

名前は覚えていないけれど、多分フランスかどこかのハーフで男にも女にもチヤホヤされて嬉しそうにしていた人。

「ずっと前から好きでした!」

案の定呼び出された理由は「告白」だった。

彼女は顔を真っ赤にさせながら「付き合って下さい!」と愛の告白を述べる。

対して僕は自分でも分かるくらいに冷めた目をしていた。

(すずちゃん以外に「好き」って言われてもなぁ)

もし、目の前にいるのがすずちゃんだったらな。想像出来ないほど程遠い未来に目眩すら覚える。

「・・・」

「あの、えっと、月島くん?」

自分で言うのもなんだが、僕は世間一般で言う“イケメン”に属するらしい。

イケメンの自覚はないが、モテている自覚はあった。

こうして呼び出されて告白、が日常茶飯事になったのは小学生から。中学生、高校生と年齢を増していくうちに、告白された回数は2の倍数で増えていっている。

その所為か、男にやっかみを買うこともしばしば。故に僕にはあまり友達がいない。

「ねぇ、僕のどこかそんなに良いの?」

「えっ?」

正直、自分のどこにモテる要素があるのか分からない。

人付き合いも愛想も決して良い方ではなくて、基本すずちゃんを見ている時以外が感情が欠落している顔をしていると思う。

同じ質問を桔平にもしたことがある。「何で僕ってモテるんだろうね」って。彼は「顔だろ」と即答していた。その後なぜか「何かムカつく」とチョップをお見舞いされたけれど。全く、血も涙もない男である。

でもただ顔が良くてもダメなのだ。

すずちゃんの好みの顔じゃないと僕は胸を張ってイケメンですとは言えない。

「月島くんって、格好良いし!優しくて!ひ、一目惚れだったの・・・!」

「?」

その言葉に疑問を持った僕は首を傾げる。

予想外の反応に動揺したのか、彼女も戸惑っている様子だった。

「つ、月島くん?」

「僕さ、君に優しくしたことなんてあったっけ?」

そう尋ねると彼女は「へ?」と豆鉄砲と食らったようなマヌケな表情になった。

だって僕にはこの人に優しくした記憶なんて1ミリたりともないのだ。

もしかして誰かと勘違いしているのではないかと思った。そうだとしたら早く訂正してあげないといけない。

僕は「告白する相手を間違ってない?」と尋ねた。

すると、彼女はもじもじと恥ずかしそうに身を捻らせる。顔も赤く染めている。

僕は思う。この人もしかして暑さにやられて、熱中症になっているんじゃないだろうか。ほら、屋内でも熱中症になるってニュースでも言っていたし。

すずちゃんも、暑いからといってお腹を出して寝てはいないだろうか。いつかお近づきになれたら、冷感素材のタオルケットをプレゼントしよう。そうしよう。

(いや、でもすずちゃんのことだから体調管理もばっちりだろうなぁ)

その辺りも絶対に抜かりなく過ごしているに違いない。

「月島くん?」

「え?あ、ごめん。続けていいよ」

「先週・・・廊下でぶつかっちゃって私が転んだ時あったでしょ?」

(そんなことあったっけ)

「前を見ていなかった私が悪いのに、月島くんが『よそ見してた、ごめんね』って謝ってくれたことがあって、優しいなぁって思ったの」

そう言われた僕は暫くの沈黙を経て、ピンとくる。

(・・・あぁ、思い出した)

あの時は確か、友達と談笑しながら歩くすずちゃんが見えたのだ。食い入るようにガン見していたら、前から歩いてきた人とぶつかってしまったのだ。やけにあの時の僕はぼーっとしていた。

だって聖母マリアのような慈愛に満ちた表情のすずちゃんから目が離せなかったのだ。

確かに『(すずちゃんが今日も尊くて)よそ見してた、ごめんね」と謝った気がする。

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